アンリ・ベルクソンとは

アンリ・ベルクソン(1859~1941)は、「持続」「進化」などを重視し「イマージュ」「エラン・ヴィタール」といった概念を哲学に導入したフランスの哲学者です。

同時代の哲学者にはカール・マルクス(1818~1883)、フリードリヒ・ニーチェ(1844~1900)、ジグムント・フロイト(1856~1939)などがいます。この3名はドイツ人なのに対し、ベルクソンはフランス人でした。

ベルクソンの主著は『時間と自由』『物質と記憶』『創造的進化』『道徳と宗教の二源泉』の4冊です。他に、様々な出版社から刊行され日本で入手しやすい本として『笑い』があります。

ベルクソンの生まれ、リセ高等学校教員時代

ベルクソンはポーランド系ユダヤ人の父とイギリス人の母の下で、1959年にパリで生まれました。その後、ロンドンを経て、フランスのノルマンディー地方に居住地を移します。

パリ大学で人文学を専攻し、1881年に受けた教授国家資格試験では2位で合格しました。

ベルクソンは、1881年にパリ大学で受けた教授国家資格試験に合格した後、複数のリセで教員を務める傍ら1889年にソルボンヌ大学に学位論文『意識に直接与えられたものの試論』(=『時間と自由』)を提出し文学博士号を授与されます。

『時間と自由』(1889年)

ソルボンヌ大学提出した学位論文でもある『時間と自由』で重要な概念として「持続」があります。例えば音楽は、一瞬の音の断片を切り取っただけでは音楽足りえません。

ベルクソンは自発的な連続性を「持続」あるいは「純粋持続」と呼びました。また、この「純粋持続」が自由の源泉であると考えました。

ベルクソンは、リセ教員時代にもう1つの主著『物質と記憶』を執筆しています。この著書は「イマージュ」という概念を取り込んでいることから重要な本です。

『物質と記憶』(1896年)

ベルクソンが『物質と記憶』で取り組んだのが「心身問題」でした。デカルト(1596~1650)は心と身体(物質)を別のものとして考えましたが、ベルクソンは心身を表裏一体的なものと考えました。その心と身体(物質)をつなぐものが「イマージュ」です。

イマージュについて

イマージュは、英語のイメージ(image)に相当しますが、ベルクソンのいうイマージュはそれとは異なり、「心と身体(物質)」を取り囲んで一体化させている概念です。

では心と身体(物質)は区別がつかないかというとそうではなく、「記憶の有無」が、心と身体(物質)を区別していると考えました。まさに『物質と記憶』というタイトル通りの考え方です。

『笑い』(1900年)

ベルクソンの四大主著には含まれませんが、様々な出版社から出版されていて入手しやすい著書に『笑い』があります。笑いを定義、分類し、そのメカニズムを明らかにしようと試みた著書です。

コレージュ・ド・フランス時代

『創造的進化』(1907年)

ベルクソンはこの時期に『創造的進化』を執筆しました。これはダーウィンの進化論の影響を受けていますが、考え方は大きく異なります。

ダーウィンの進化論が「環境に適応したものが生存し、進化する」と考えたのに対し、ベルクソンは自然淘汰でなく、「生命の力」が進化を進めるのだと考えました。

この「生命の力」を表す概念が「エラン・ヴィタール(生命の飛躍)」です。

晩年の活動

『道徳と宗教の二源泉』(1932年)

『ベルクソン―<あいだ>の哲学の視点から』(岩波書店)の著者である篠原資明氏は、哲学者のうち、宗教を含めて論じようとした哲学者の少なさについて悲観しています。そのような中で、篠原氏はベルクソンを大きく評価しています。

それは、宗教と哲学、さらに進化論や自由、「エラン・ヴィタール」を発展させた「エラン・ダムール」など、幅広く論じた数少ない哲学者だからです。

死去

ベルクソンは、ドイツ軍がパリを占拠した1940年の翌年1941年に自宅にて亡くなりました。